
関 晶一
2015年入社主にキャラクターに関連するコンセプトアートの制作、アイコンなどのデザイン制作を担当。
開発の進行に合わせて
ブラッシュアップを重ねる
ファンタジーやSFを題材にしたポートフォリオをきっかけに声をかけてもらい、2015年に新卒で入社しました。入社してすぐに『Bloodborne』のDLCの
エネミーキャラクターやアイテムアイコン、『DARK SOULS Ⅲ』の“老狼の曲剣”といった武器などのデザインを担当しました。『Déraciné』では世界観の
コンセプトアートの制作からキャラクター、アイテムなどのデザインをひと通り手掛けたことで、自分のデザインの幅が広がったと思います。
『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』で“狼”のデザインに立ち上げから参加したことをきっかけに、いわゆる人型のキャラクターデザインも担当するように
なりました。フロム・ソフトウェアではひとつのコンセプトアートの制作に複数のデザイナーが参加することが多々あります。“狼”にも自分だけでなく別の
デザイナーのアイデアが詰まっていますし、忍び義手のデザインは他のメンバーによるものです。
また顔の造形は「眼差しから強い決意や優しさを感じ取れるようにしたい」と考え、3Dグラフィックアーティストとすり合わせながら作っていきました。
他には刀などの武器のデザインも担当しました。ユーザーのみなさんに好きになってもらえることはもちろん、リアリティーとケレン味が両立する真剣な造形を目指し、時間をかけて皆で“狼”を作り上げていきました。






コンセプトをそのまま形にすることなく
可能性を模索し深化させる
デザイナーの業務の流れは、ディレクターやゲームプランナーから提示されたコンセプトやキーワードなどから想像を膨らませて、初期ラフを描くことから始まります。私の場合は、そのキャラクターがいる場面、そこにある音や匂い、バックボーンを思い浮かべて、コンセプトの解釈を深めながら
イメージを広げていきます。この段階では思いついたキーワードや印象をもとに自由に描きますが、フィードバックを繰り返し方向性が決まった段階で、
3Dグラフィックに落とし込んだときにプレイヤーからどう見えるのかなどを考えながら作業を進めます。たとえば“狼”で言えば、刀を構えたときに衣装の
しわがどのように見えていればカッコよくなるのか、3Dグラフィックアーティストはこのしわをどのように表現するだろうか、と言ったことも考えて
ブラッシュアップしていきます。制作には主にPhotoshopを使用します。
『SEKIRO』では“ぬしの色鯉”が印象に残っています。魚のキャラクターのデザインを手掛けるのは初めてで、資料を集めて、人が魅力的に感じる錦鯉とは
どんなものだろうと、自分なりに分析しながらイメージを作っていきました。しかし、それではただの“鯉”になってしまいます。キャラクターの設定や
バックボーンを深掘りして、世界観の中での神性や、知性を獲得してしまい哀しみ、悩みなどの生きる苦悩を漂わせることを意識してデザインしました。
コンセプトをそのまま形にするのではなく、フィードバックを繰り返しさらに深化させることでデザインに複雑さの幅が生まれたように感じています。



経験や体験の積み重ねが感覚の
具現化につながる

キャラクターやゲーム背景のコンセプトアートとは異なり、アイコンのデザイン画はそのまま
グラフィックとしてゲームに実装されます。アイコンとしての視認性だけでなく、質感や実在感を意識して制作します。たとえば『ELDEN RING』に登場する“鉤呼びの指薬”のデザインでは、指ですくって
薬が舞うイメージに加え、つねに携帯して使い込んでいる摩耗感や、古くに“狭間の地”にいる誰かが作ったものというバックボーンを想像し、それにふさわしいイメージが出るようデザインしました。
ディレクターやゲームプランナーの考えるコンセプトやキーワードを自分なりに深めながら解釈し、デザインからバックボーンを感じ取れるような共感力のあるものを表現する力が重要だと考えています。デザインを描くにあたって感覚を具現化することがよく求められますが、たとえば「冷たい」という感覚ひとつをとっても、それをあらわす言葉や物、表現がたくさんあるなかで、プレイヤーにその感覚をもたらすにはどうしたらいいのか、いつもその方法を模索しています。ディレクターやゲームプランナーがプレイヤーにもたらしたい体験や感覚をデザインに落とし込めることができるようになれば、さらにいいものが仕上がります。そのための一つの手段として、生活の中で様々な経験や体験を重ねることが大事だと思っています。自分の場合、美味しそうに見えるものを描いてほしいというオーダーが来たとしても、美味しいものを食べたことがなければ自分は美味しいをどう感じているのか、どうアイデアに落とし込めるのかなど浮かばないと思うので。
ディレクターやゲームプランナー、3Dグラフィックアーティストといった開発スタッフだけでなく、その先にいるプレイヤーがどう思うのかを想像できる客観的な視点を失わないようにすることが大事なことだと思います。